ここ数年の目標だったクラウンプライズに合格することができた。
思い返せば、テクニカルプライズを取得したのは12年前。その後も何度かクラウンに挑戦したものの全く歯が立たず、テクニカルとクラウンの大きな壁に打ちのめされた。いつしか検定への挑戦は頭の片隅からも消えていた。
そんな中、4年前にVECTORGLIDEのSLモデル「MAXI S13」がフルモデルチェンジしたことをきっかけに、それまで使用していたMAXI S13から新型へ買い替えた。「これが最後のSL板になるだろう」と思って購入した板だった。
ところが、この板のフィーリングが非常に良かった。久しぶりにその気になり、プライズ検定への挑戦を再開した。
そして挑戦再開4年目となる今シーズン。板を再度VECTORGLIDE MAXI S13を買い直し新車に、ブーツはDoberman M5-LCからDoberman M5-Sへ買い替えた。さらに、自分のスキー技術を一から組み立て直すため、次の3つの視点を軸に取り組むことにした。
【1. ターンは普遍的な物理現象である】
人や道具が違っても、ターンそのものは物理現象だ。同じ条件下で同じ入力が加われば、起こる現象も基本的には同じはずである。
【2. ターンの見かけの現象】
いわゆるシルエットや動きのことだ。上手く見える滑りには、それが上手く見える理由となる現象が存在する。何をしているのか、あるいは何をしていないのか。映像から読み取れる現象の構造を探る。
【3. ターンの操作感覚】
これが最も整理しにくい。感覚には客観的な基準がなく、人によって表現も異なる。そして重要なのは、自分が感じている感覚だけでなく、上級者が語る感覚も、その言葉通りには受け取れないということだ。
これまでの私は、上級者の滑りを見て「2.見かけ」を真似し、「3.感覚」を試行錯誤するだけだった。しかし感覚だけを頼りにしていては上達に限界がある。
そこで改めてビデオカメラを購入し、滑るたびに撮影を行った。自分の滑りという現象を客観的に確認しながら、友人たちのアドバイスも参考にして徹底的に滑りを組み立て直した。
この数年間は、常にこの3つの視点から自分と上級者の滑りを見比べ続けた。
本質的には、技術的に未熟な人間が上級者の滑りを見ても、分析できるのは自分の理解できる範囲までだと思う。上級者の感覚をそのまま自分の感覚として再現することはできない。
だからこそ、「1.物理現象」と「2.見かけ」はできる限り客観的に整理し、「3.自分の感覚」に落とし込むためには様々なパターンを試す必要があった。
実際、できていると思っていた動きが真逆だったこともある。上級者からもらったアドバイスの意味を、2年後になってようやく理解できたこともあった。
ターンを物理現象として分解し、映像に映る現象と自分の操作感覚とのズレを少しずつ修正していく。その結果、映像の中の自分が少しずつ変わっていくことに手応えを感じ始めていた。
とはいえ、正直なところ今シーズンもクラウンに合格できるとは思っていなかった。
週末しか滑れないスキーヤーのわずかな上達よりも、年齢による体力の低下の方が大きいと感じていたからだ。それでも毎週現れる課題に向き合い、一つずつ取り組み続けた。
今シーズンは夏のマットスキーからスタートし、オフシーズンに構想を練って仕上げたブーツとスキーのセッティングが全く噛み合わず、結局1月半ばまで道具の調整に追われることになった。
2月に入る頃にはようやく道具を意識しなくて済む状態になり、そこからは苦手の小回りの土台作りに時間を費やした。
例年、シーズン序盤は低速で基本動作を繰り返す。しかし今シーズンは、できるだけ早い段階から斜度のある斜面で同じ練習を行った。
昨年までは中斜面でできる動きが急斜面になるとできなくなり、斜度への対応に苦労していたからだ。緩斜面で精度を高めても、急斜面への対応力は思うように向上しない。その反省を踏まえた取り組みだった。
また、様々な雪質に対応できるよう、ホームゲレンデ以外にも積極的に足を運んだ。
例年3月後半の検定では、湿った雪や春特有のザブ雪に悩まされることが多かった。技術の向上によって雪質への対応力は高まるとはいえ、慣れによる影響も決して小さくないと感じていたからだ。
こうして今シーズンも3つの視点を軸に滑りの再構築を繰り返した。
大回りについては比較的早い段階で方向性が固まった。しかし、小回りとコブは最後まで悩み続けた。
大雑把に言えば、カービング主体でいくのか、それともズレを主体に組み立てるのか。その判断がなかなか定まらなかったのである。
どちらの方向性にも取り組んでみたものの、決定打となる手応えは得られないまま、2月の検定が近づいていた。
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