一般的にスキーブーツの「硬さ」というと、膝を前に入れた際の前方への硬さ、いわゆるフレックスを指すことが多い。
しかし実際には、ブーツの硬さや剛性感は、シェル素材・厚み・構造、インナーブーツの素材や厚み、さらにはサイズ感や足の収まり方によっても大きく印象が変わる。
メーカーが示す「140」「130」「120」といったフレックス値も、DINのような統一規格ではなく、あくまで各メーカー内での相対的な指標であることはよく知られている。
上級者は経験上、「このメーカーのこのグレードの120ならこれくらい」という感覚的な基準で捉えている場合が多いだろう。
現在のハイエンドモデルは、多くが4バックル・2ピース構造を採用しているため、そうした感覚的比較も成立しやすい。
ブーツ選びで重要なのは、突き詰めると次の2点だと思う。
- フィット感
(局所的な痛みがなく、適度に足が収まるか) - レスポンス
(入力に対してどれだけ早く反応するか)
フィット感については、シェル出しや熱成形、インソールなどのチューニングでかなり改善できる。
ただし、元々のシェル形状やラストとの相性はやはり重要で、お金と時間をかければ何でも解決するというほど単純でもない。
次に「硬さ」について。
一般的にはフレックスと同義で使われることが多いが、実際には多くのスキーヤーは“入力に対するレスポンスの速さ”を「硬い」「柔らかい」と感じているのではないかと思う。
例えば、シェル剛性が高く、入力に対して早い段階で圧を返してくるブーツは「硬い」と感じやすい。
逆に、同じ圧に達するまでに少し時間がかかり、奥で圧を感じるブーツは「柔らかい」と感じやすい。
結果として、硬いブーツは大きく前屈せず、柔らかいブーツは前方移動量が増えやすい傾向になる。
また、実際のブーツ性能は単純な前方フレックスだけではなく、
- シェルの復元力
- 捻れ剛性(トーション)
- 初期入力の立ち上がり
- 変形特性
など、複数の要素が組み合わさって決まっている。
上級者になるほど、単純に「脛で押して曲げる」感覚よりも、
- 足裏荷重
- 重心移動
- 外力の利用
- ブーツ全体の応答性
を重視する傾向が強くなる。
もちろん競技レベルでは脛圧も重要だが、常に押し続けるというより、必要な瞬間に使う感覚に近い。
そして、このレスポンスはバックサポートビスだけでなく、バックルの締め方でも大きく変化する。
一般的にはバックル調整はフィット感のためと思われがちだが、実際には操作感にも大きく影響する。
基本的には、締めるほどレスポンスは速くなる。
例えば、
- 第3・第4バックル
- パワーストラップ
をしっかり締めると、前方レスポンスが速くなり、大回りや高速域では非常に安定しやすい。
一方で、アッパーを少し緩め、ロアをしっかり締めると、レスポンスが穏やかになり、コブなどでは上体を安定させやすくなる。
逆に、アッパーだけ強く締め、ロアが緩い状態では、脛だけが先に反応し、足裏支持が遅れやすい。
その結果、操作が脛主導になりやすく、個人的には非常に滑りにくく感じる。
結局のところ、ブーツの「硬さ」は単なるフレックス値ではなく、スキーヤーの入力に対して、ブーツ全体がどのように反応を返してくるか――その総合的なレスポンスとして捉えると理解しやすいと思う。
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