2012/05/01

御岳BC[10'回顧録-滑落編]#2


御岳BC[10'回顧録]#1より 
前回からのつづき・・・

自分で読み返しても、アノ時の感覚が蘇る・・・・
アレで怪我でもしてたら、やめてたかも・・・・(何を?)
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突然足場を失った僕はなすすべもなく、平坦な急斜のアイスバーンに叩きつけられ、
後ろへ(フォールライン)急加速を始める!!!! 

大きな衝撃と共に視界は一転し、空と氷しか見えない 
氷の斜面をどんどん加速していく! 
「!!!!」 
無駄だと解っていても、手で斜面に抵抗を求める・・・ 
減速の様子は全くなく、加速がつづく・・・ 
完全にパニック! 
シールの付いたスキーは加速を緩める抵抗には一切ならず 
エッジが咬む感触は一切無い! 
「まずい!」 
「このまま滑り落ちては、止まらない!」 

あの日も天気はよかった、天気は・・・・
凍てついた斜面は想像以上に僕を加速させる・・・ 
腰を大きくひねったまま、自分と斜面の摩擦音だけが耳をつんざく・・・・ 

 稜線に出る前の休憩で隊長が 
「とかく、雪崩を気にしますがこんな(雪が硬い)日は、むしろ滑落に気を付けてください。
上で一度滑ったら、止まりませんから・・・」 
と言っていた。 
その時、僕は 
「ストックはどうする?」 
「滑落時、止めるのはストックしかないけど?ストラップ、通す?外す?」 
その時、結論は出ず結局僕はストラップを両方通していた。 

そう、両方ストラップを通していたのだ。 

滑り落ちる中で目の前にストックが見える。 
思考がストックにシフトした。

しかし、ストラップをしたストックのリングは、頭のずっと上で斜面に叩かれ跳ねるばかり、
左手で左のリングを握ることは不可!!! 

「どうする!?」 

そもそも、ここまで加速した体がストック1本で止まるのか? 
僕は絶望的な加速の中で考える!!!! 

「リング(の上)を握らないと!」 

滑り落ちる中、左手を下げ近づいたリングを右手でたぐり寄せる。

「!!」 

リングの上を右手でつかむことが出来た。 
加速が続く中、 
「岩とか木とかまだありませんようにぃ~」 
とか思いつつ、加速を止めるべく斜面にリング下を突き刺す!! 

しかし、十分な加速をした80kg近い体と装具は、期待ほど減速しない! 
「止まるのかぁ~!!!」

しばらく、僕の期待を裏切り続けるも、
幸いな事に次の衝撃を受けることもなく 
ほぼ転倒した姿勢のまま斜面に止まった・・・・・ 

おそらく、転倒から停止までは数秒。 
思考が止まって、転倒の瞬間の恐怖だけが頭に残る・・ 

遠くの方から「大丈夫ですかー!」と
二人のボーダーが駆け寄ってくれた。 
スノーシューの登坂ルートからは数メートル離れていたが 
もの凄い早さでこちらに来る。 

僕は頭を上げることも出来ず、 
「大丈夫です!大丈夫。」と応えるも 
全く思考が停止している。 

「今日はアイゼン無いと無理だから引き返した方がいいよ」 
「はい、そうっすね。」 
などと会話をしつつも思考が回らない。 

二人が戻り一人になり、ようやくセルフチェック。 
腰にひねった違和感はあるが大きな痛みはない。 
パンツのサイドジッパーが大きく左右とも開きはだけている 
(一度頭が下になったような?ならなかったような?) 

何故か水浸しでウェアが濡れていた。 

どうやら、転倒でハイドレーションの先が飛んで積んでいた水がダーダーに漏れている。 
「クソっアレ高いのに!」などと思いつつ 
3、40分(もっとか?)は登っただろう斜面を数秒でヤリ直し!! 

取りあえず、隊長に電話連絡。なかなか繋がらない。 
行動可能とだけ伝える。 

引き返そうとも思ったが、斜面の途中で止まったため、
ここで滑走準備をすることもままならない。 
引き返すにしても稜線まで登らないと、場所が確保できない!! 

ここから、再び悪夢の40分?が始まる・・・・ 

長いな、続く・・・・続くかな。


 ※もう少しお付き合いを・・・


御岳BC[10'回顧録-最終章]へ・・・つづく

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